社長が「社長の仕事」に専念する方法

会社で最も重要な資産は何か

皆さん、会社で最も重要な資産は何だと思いますか?

会社の資産といえば、一般的には「人・モノ・金・情報」が挙げられますが、私は「社長の時間」こそが最も重要な資産だと考えています。それはなぜかというと、社長がどう時間を使い、何に注意を向けるのかが、「人・モノ・金・情報」といった資産をどのように配分するのかを決定するからです。

しかし現実には、社長は日々の業務に忙しく、本来の社長業務に専念する時間が不足していることが多々あります。多くの社長から、「とにかく忙しい」、「やりたいことに時間を使えていない」、「自分がいないと業務が回らないため休むことができない」といった話を伺います。体感としては、働く時間の約2割しか「社長業」に使えていないという方もいらっしゃいます。1週間の働く時間を仮に50時間とすると、社長の仕事には10時間しか使えていないということです。このような状況では、社長の思考がつい近視眼的になり、目の前の出来事への対処療法に終始することに陥るリスクが高まります。本人は日々忙しく頑張っているにもかかわらず、全体を俯瞰して問題解決を行ったり、望む未来へつながるような意思決定を先送りにしてしまい、今までの行動をただ繰り返すことになりかねません。

社長業に専念できない理由

社長が本来の仕事に専念できない理由は大きく2つに分けられます。

一つ目は、社長の仕事に対する意識の問題で、具体的には以下のようなものです:

    • 「自分がやってきた仕事意識」問題
    • 「現場から離れられない」問題
    • 「誰よりも早く気がつく」問題
    • 「自分の優秀さを顕示したい」問題
    • 「慣れた仕事への逃避」問題

社長がこれまでプレイヤーとして積み上げてきた責任感・自負感が背景にありますが、一方で、自分の重要感を満たしたい、コンフォートゾーンにいたいという人間としての欲求が現れてしまっているものです。人間心理として自然な面があるが故に、「社長の仕事」を自ら定義してそれに専念していく意識が必要です。

もう一つは、仕事を任せることに関するマインドとスキルの問題で、具体的には以下のようなものです:

    • 「失敗は許されない」問題
    • 「自分がやった方が早い」問題
    • 「部下の指導が面倒」問題
    • 「教える時間がない」問題
    • 「任せる部下がいない」問題

社長が自ら業務を行うことで、短期的な業績や成果が上がる場合が多々あります。しかし、長期的な視点で見ると、組織の成長や効率の向上が阻害されるというペナルティが課される恐れがあります。人に仕事を任せるというのは、身につけるのに時間も忍耐も必要なマインド・スキルであり、意識的に取り組む必要があります。

中小企業では、人的リソースの不足から、社長が実務も担う「プレイイング社長」とならざるを得ないことがしばしばあります。しかし、会社の成長に伴って、プレイヤーとしての業務の比率を意識的に下げていかなければなりません。プレイヤーとしての業務を手放せないがゆえに、社長にしかできない仕事に手が回らないとすると、その会社の成長の制約条件となってしまいます。

未来時間の創出

では、どうすればこれらの問題を解決できるのでしょうか?

私は、「社長の時間を創出する」ことが解決の糸口であると考えています。具体的には、「未来に使う時間」を週に2時間、月に10時間確保することです。天引き貯金と同じで、一週間のスケジュールを策定する際、まず「未来時間」をブロックするのです。その時間を使って、「社長として本当はやりたいこと、社長としてやらなければならないこと」は何かをじっくり考えることが第一歩になります。その際、何を考えればいいのかを相談したり、アイデアの壁打ち相手になってくれる第三者がいると良いと思います。

これだけでは抽象的でわかりにくいかもしれませんので、私がサポートした社長の事例をご紹介します。その社長は会議で各責任者に細かく指示を与えていくのが好きで、彼のスケジュールは毎日「テトリス」状態でした。そのため、将来の事業展開などをじっくり考える時間は、月に2時間程度しか取れていませんでした。

そこで、幹部に任せる会議を増やしたり、一つ一つの会議の時間を短縮したりすることによって、出席する会議の時間を月に15時間削減しました。一方で、幹部とのコミュニケーション向上と能力開発を狙い、個別ミーティングを月に5時間行うことにし、差し引き月に10時間の時間を創出しました。

その結果、将来の事業展開に充てる時間を2時間から12時間へ増やすことができ、その時間をそれまで赤字が続いていた新規事業に集中的に投下、トップ営業も仕掛けることで短期間で新規事業を黒字化させることに成功しました。また、幹部がより自発的に考え、発言するようになるという効果も得ることができました。これに手応えを感じた社長は、その後、会社の未来への取り組みを次々と企画・推進していく好循環を回していきました。

社長業専念コンサルティング

現代のビジネス環境は複雑で変動が激しいため、社長の戦略的思考と迅速な意思決定は以前にも増して重要です。今と同じことを繰り返しているだけで、明るい未来が期待できる会社はほとんどないと思います。「時間がない」ことを言い訳に、これまでのやり方で進むのは極めて危険です。「考える時間ができたら」を待つのではなく、「考える時間をつくる」意識が重要です。

リーディングチェンジでは、社長が「社長の仕事」に専念できるよう、業務の仕組み化と組織化をサポートする「社長業専念コンサルティング」を提供しています。具体的には、未来を考える時間の創出を起点に、会社の理念の明確化・言語化、戦略・アクションへの落とし込み、業務の断捨離、仕組み化、組織化、継続的なカイゼン、従業員トレーニング等を幅広く行うことにより、会社の実践力向上、組織経営へとつなげていきます。その内容については、別の機会にご紹介したいと思います。

 

社長業専念コンサルタント 横山 一成

社長業専念コンサルタント 横山 一成

「経営者の志をリスペクトし、その具体化を通じて、お客様や働く仲間もワクワクする会社へ磨き上げるサポートをする」を理念に、社長業専念コンサルティング、企業改革・業務改善等の経営コンサルティング、従業員向け研修を実施している。

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