前回のブログでお伝えしたように、「考える時間ができるのを待つ」ではなく、「考える時間を積極的に創り出す」意識が重要です。
では、どのようにして時間をつくればいいのか、いくつかの手法を紹介します。
1. 時間の使い方を「見える化」する
人は自分の行動の約60%を無自覚に行っています。
そのため、時間の使い方を改善する第一歩は、自分の時間の使い方を「見える化」することです。ピーター・ドラッカーをはじめ多くの専門家が、自分の時間の使い方を記録することを推奨しています。しかし、私が開催している「時間術セミナー」で参加者に伺うと、ほとんどの人が「スケジュール管理」は行っていますが、「時間の使い方・活動実績」の記録・管理はほとんどしていません。
スケジュール管理においても、多くの人は客先とのアポイントや会議、仕事の締め切りなど「外部からの要請」は記載していますが、それ以外の時間に何をするかは記載していません。
多くの人が日々、メールの返信や、資料作成など様々な仕事に忙しくしていますが、それらの時間管理はあまりされていないようです。その結果、仕事の効率改善が進まないだけならまだしも、「一日忙しくしたけれど、何も終わっていない気がする」という気分になってしまうのではもったいないと思います。
2. 自分の時間の使い方を記録する(タイムログ)
人は「何もしていない」時間というのはなくて、常に「何か」をしています。たとえそれがぼんやりすることや、スマホで時間をつぶすことであってもです。
ですから、「時間の効率を高める」というのは、毎時毎分に行う活動の価値を高めることといえます。誰にも見せる必要はありませんので、まずは1週間、自分の時間の使い方(以下「タイムログ」)を記録してみてはいかがでしょうか。
タイムログ記録は、バーティカル式手帳に記入してもいいですし、Excelなどで簡単な記録シートを作ってもいいと思います。また、タイムログを管理するアプリも多数存在します。ただし、スマホは集中力を散漫にするトラップが満載なので、私は避けています。ドラッカーは15分ごとの記録を推奨していますが、継続が最も重要なので、厳密に考えなくてもいいと思います。
ちなみに私は、スケジュール管理は「Googleカレンダー」で行い、タイムログ記録は「カズン ほぼ日手帳HON」の週次カレンダーを使っています。
私の場合、かなりムダな時間の使い方が見つかりました。タイムログをつけていても、いまだに「使途不明時間」がまだあることにも驚かされます。しかし「レコーディングダイエット」と同じで、タイムログを記録するだけで、行動を改善したいという気分になる効果があるのも、強く実感しています。
3.「未来時間」をブロックする
時間は「外部からの要請」と「自分のやりたいこと」との奪い合いです。「自分のやりたいこと」を先に入れない限り、「外部からの要請」に奪われてしまいます。
そのため、時間を創出するための次のステップは、「未来時間」、つまり、自分の未来を良くするためにじっくり考える時間をブロックすることです。
これは、お金の管理における「天引き貯金」の時間版です。スティーブン・R・コヴィーの『7つの習慣』で紹介されている、時間管理マトリクス(緊急度x重要度マトリクス)における「第二領域(緊急ではないが重要)」の時間を強制的に確保することに相当します。
まずは週に1時間x2スロットを目安にしてはいかがでしょうか。おすすめは、まだ体力・脳力・精神力が十分な午前中(可能であれば朝イチ)です。
現実には、「第1領域(緊急かつ重要な仕事)」が突然発生することもありますが、その場合には「未来時間」を再スケジュールして対応すれば良いのです。あまり難しく考えずに、カレンダーに「未来時間」をブロックしてみてください。
4. 未来時間に何をすればよいか
未来について考えるといっても、あまりにも遠い将来だと漠然としていて、今やるべきことが見えづらいこともあるので、まずは「3~5年後くらい」をイメージしてはいかがでしょうか。
未来時間に考える内容は、ご自身の未来につながるものであれば何でも良いです。たとえば、自分が本当にやりたいことを見つめる、会社の理念を具体化・言語化する、現状の延長線上でない新戦略を構築する、業務の抜本的な見直し・仕組み化、頻発するトラブルの抜本的な対策などです。
その「未来時間」に考えた内容は、ノートに「手書き」することをおすすめします。頭の中だけで考えようとしても、なかなか集中力は続きませんし、考えは深まりません。頭の中に浮かんだものを書き出し、それを目で見ることによって、新しい発想が浮かび、考えは深まっていきます。考えがうまくまとまらず、単語の羅列やイメージ図しか浮かばないこともあると思いますが、それを書き出してください。それが刺激となって、新しいアイデアがひらめくのを実感できると思います。
5. 定期的に振り返る
時間の使い方を上達させるために重要なのが、自らの「時間の使い方」を定期的に振り返ることです。日時・週次・月次等で振り返ることで、それぞれメリットがありますが、ここでは週次振り返りに絞ってお伝えします。
「振り返り」というと、自分のダメな部分に向き合うというイメージを持つ方もいらっしゃると思いますが、それだと「振り返り」が習慣化されません。「振り返り」を習慣化して、自分の時間の使い方を継続的に改善していくために、以下のステップで行うことをおすすめします。
(1) 今週達成したことを書き出す
-
-
-
- 1週間の自分の活動実績を一つ一つ見直し、自分の活動成果と思えることを書き出してください。バタバタしていて何も仕事が進んでいないような気がしていても、意外と色々なことを行っていたことに気づくと思います
- 特に、緊急ではないが重要なタスク(第2領域)を行った場合には、それをしっかり自己評価することが重要です
- どれだけの時間を「未来時間」に投入したか、また、どれだけ集中できたかを確認し、その時間に何を考えて、どのような気づきがあったかノートを見直しながら振り返ってください
- 全体として、「今週よくできたこと」は何か、書き出してみてください。小さなことでも、自分の進歩を認めることが大切です。たとえば、「時間の使い方を記録することができた」「今、時間の使い方の振り返りをしている」「来週締め切りの資料の企画を前倒しで完了した」といったことでもOKです
-
-
(2) 改善点を挙げる
-
-
-
- 今週達成したことを見直して積極的に評価するとしても、目標と比べると未達に終わっていることもあると思います。自分を責める必要はありませんが、ちゃんと向き合うことは重要です。
- 今週やろうと計画していたのに、未実施で終わったものは、なぜ実施できなかったのか考えてみましょう。
- 外部要因でやむを得ず
「緊急な仕事が飛び込んできた」といった外部要因のこともあるでしょう。それが、「緊急かつ重要(第1領域)」の仕事なのであれば、それは仕方ありません。しかし、飛び込んできた仕事が「緊急だけれども重要ではない仕事(第3領域)」の場合には、対処の方法を工夫する余地があったかもしれません - やる気が起こらず先送り
なんだかやる気が起きずに、先送りしてしまったということもあると思います。自分に正直に、先送りしてしまった理由に向き合いましょう。先送りへの簡単な対処方法としては、以下の2つがありますので、試してみてください。- その仕事をすることの目的を思い出したり、それをすることによって得られるメリットを明確にする
- その仕事を具体的なタスクに分解して、最初の一歩目を明確にする
- 想定していた時間内に完了できなかった
私たちは、タスクやプロジェクトを完了するために必要な時間を過小評価する傾向にあります(計画的誤謬)。実験では、実際にかかる時間は見積もった時間の2倍かかると言われています。自分の時間見積もりの癖を理解して、それを改善していくことで、計画の精度を向上していくことができますし、結果として「やるべきこと」を絞り込む必要性にも気づくことができます。
もしくは、集中出来なかった、段取り不足といったこともあると思います。自分はどういうときに気が散ってしまうのか、どんな段取りを見逃す場合が多いのかを確認しておくことが、次回以降に役に立ちます。
- 外部要因でやむを得ず
-
-
(3) 最後に、来週の計画、工夫することを書き出しましょう
-
-
-
- 来週取り組む重要な仕事の棚卸し
繰り返しになりますが、「緊急かつ重要(第1領域)」だけでなく「緊急ではないが重要(第2領域)」なことを書き出し、時間をブロックしましょう - タスク分解し段取りを考える
仕事を細かいタスクに分解し、それらのタスクを行うために必要な段取りを考えましょう。周りの人に何かをお願いする際には、その方に十分なリードタイムを与えるようにすると、気持ちよく対応してもらえると思います - 今週の反省を踏まえて、来週工夫したいことを書き出してみましょう。そして、日々目に留まるようにしておくことをおすすめします
- これを週に1回行うと、1年間に52回カイゼンする機会が生まれます。毎回の進歩は小さなものですが、1年蓄積すると大きな違いが生まれます
- 来週取り組む重要な仕事の棚卸し
-
-
今回のブログでは、考える時間を創出するための具体的な方法を紹介しました。時間の見える化、タイムログ記録、未来時間の確保、定期的な振り返りなど、基本的なテクニックをお伝えしました。まだ実践していないことがあれば、是非トライしてみてください。
コメント
COMMENT