1.はじめに: 新年度、新たな目標への挑戦
新年度が始まる4月は、多くの人にとって新たな目標を掲げる時期でもあります。新しいことを始めようとする方も多いのではないでしょうか。
「今年こそ、英語を話せるようになりたい!」
「ダイエットして、理想の体型を手に入れたい!」
「年内にこの資格をとって、キャリアアップを実現したい!」
意気込みは十分でも、いざ行動に移そうとすると、様々な壁にぶつかり、挫折してしまうことも少なくありません。
「三日坊主で、なかなか習慣化できない…」
「モチベーションが続かなくて、途中で諦めてしまう…」
「周囲の理解が得られず、気持ちが折れてしまう…」
なぜ、私たちは新年度になると新しい目標を立てるのに、それを達成できる人とできない人がいるのでしょうか?
本ブログでは、こうした悩みを抱えるビジネスパーソンに向けて、「なぜ人は変われないのか」というテーマを考え、変化を起こすためのヒントを紹介していきます。
目標達成は簡単ではありません。しかし、これは人間の脳の仕組みや心理的障壁を理解することによって、気合い・モチベーションに頼らず、より楽に行動を継続して、目標の達成に近づいていくことが可能になります。
新しい年度にあたり、あなたが立てた目標は何ですか?
また、これまでに達成できなかった目標があれば、その原因は何だと思いますか?
2.行動継続の壁:なぜ人は変われないのか?
意欲はあっても、行動を継続できない。これは多くの人が経験するジレンマです。なぜ人は変われないのでしょうか?
(1) 脳の仕組み:現状維持バイアスとドーパミンの罠
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現状維持バイアス
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私たちの脳は、変化を恐れるようにできています。これは、「現状維持バイアス」と呼ばれる本能によるものです。人類がジャングルで生活していた時代から持っていた生存本能に起因するものです。
変化には、新しい環境への適応、新しい人との関係構築、新しい仕事の習得など、様々な労力やリスクが伴います。脳は、これらのリスクを避け、安定した現状を維持しようとすることで、エネルギーを節約し、生存確率を高めようとするのです。
新しいことを始めることは、そもそも人間は苦手なのだ、と思うと「自分だけではない」と思って、少し気が楽になりませんか?こういう本能を持つ脳をどううまく「騙すか」が変化を起こす上でのポイントとなります。
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ドーパミンの罠
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新しい行動を開始すると、脳内にドーパミンと呼ばれる神経伝達物質が分泌されます。ドーパミンは、報酬予測、意欲、学習、運動などに関わる神経伝達物質です。
新しい行動を開始すると、報酬系が活性化し、ドーパミンが分泌されます。ドーパミンは、その行動が報酬につながる可能性があることを脳に知らせ、その行動を繰り返すように促します。ドーパミンは快楽に関与するため、人は新しい行動に一時的な喜びを感じます。いわゆるモチベーションが高い状態です。
しかし、皆さんもお気づきの通り、モチベーションは長続きしません。
新しい行動を開始すると、ドーパミンが分泌されて高いモチベーションが得られますが、同じ刺激を繰り返し続けることで、脳はそれに慣れてしまい、ドーパミンの分泌量が減少していくのです。
新しい行動を始めるのには、モチベーションは極めて重要ですが、行動を継続するのには不向きだということです。「人間はそういう風に出来ている」ことを理解して、モチベーションに頼らないで行動を継続するアプローチをとることがポイントです。
新しい習慣を始めようとして、強いモチベーションを感じた経験はありますか?
そのモチベーションを維持するにはどのような工夫が必要だと思いますか?
(2) 心理的障壁:自信喪失、完璧主義、先延ばし
脳の仕組み以外にも、心理的な障壁が行動継続を妨げます。
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- 自信喪失: 小さな失敗ですぐに諦めてしまう
- 完璧主義: 完璧を求めて、行動開始を躊躇してしまう
- 先延ばし: やるべきことを先延ばしにして、時間を浪費してしまう
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これらの心理的障壁は、過去の経験や性格によって形成されます。自信喪失は過去の失敗体験からくるものであり、完璧主義は高い自己評価と責任感の裏返しです。先延ばしは、不安や恐怖を回避しようとする心理から起こります。
新しいことを始める際には、当然最初は上手く出来ません。そもそも、失敗せずに出来ることは「新しいこと」ではないのです。どんな熟練者も最初は初心者だったのです。初心者がミスをするのは全く恥ずかしくないことです。英会話で文法や発音が完璧でないことを恥ずかしがる方がいます。しかし、外国の方がたどたどしい日本語で道を聞いてきたとき、文法や発音の間違いがあるからといってバカにしますか?新しいことを始めるときに小さな失敗を恐れるとしたら、それは自意識過剰です。
完璧主義や先延ばしといった心理的障壁が、あなたの行動にどのような影響を与えていると思いますか?
それを克服するために、何か試みたことはありますか?
(3) 環境の影響:時間不足、誘惑、周囲の理解
現代社会は、行動継続を阻害する環境に満ちています。
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- 時間不足: 仕事や家事に追われ、新しい行動を行う時間が確保できない
- 誘惑: スマホやSNSなど、誘惑が満ちあふれている
- 周囲の理解: 周囲の理解が得られず、モチベーションが低下
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時間は全員1日24時間ですし、人は皆全ての時に何かをしています。つまり、全員常に忙しいのです。「今の忙しさが一段落したらやろう」「今日は忙しいから明日からやろう」と言いたくなる気持ちはわかりますが、それでは望む変化を起こすことはできません。また、誘惑は、集中力を阻害し、意志を弱めます。周囲の理解やサポートが得られない場合は、孤独感を感じ、モチベーションを維持することが困難になります。
あなたの目標達成を妨げている環境的要因は何ですか?
それに対処するために、どのような対策を講じることができると思いますか?
このように、行動継続は簡単ではありません。脳の仕組み、心理的障壁、環境の影響など、様々な要因が私たちを阻みます。これらの要因はあなただけの問題ではなく、人は皆、同じ問題を抱えています。しかし、どんどん新しいことを始め、行動を継続して身につけていく人はいます。そういう人は、これらの要因を理解し、適切な方法を実践することで、ラクに行動を継続して変化につなげているのです。
3.変化を起こす道のりを理解する
目標達成に関して、以下のようなイラストを見た人も多いと思います。
個人的には、このイラストが変化に対する誤解を生んでいると考えています。
「変化のための行動を起こした瞬間に方向を変え、目標へ一直線へ進めばいい」と勘違いしていませんか?
これは、車でハンドルを切ったときのイメージです。車の方向を変えるとき、ハンドルを切れば車はすぐに方向を変え、その後はハンドルを元に戻して再び直進すればいいのです。
しかし、人が新しい変化を起こすときには、むしろ船が方向を変えるようなものだと考えたほうがいいと思います。舵をきっても、すぐには方向は変わりません。その間、舵には水圧がかかり、それを支えるには大きな力が必要なのにもかかわらずです。
変化に対してこのイラストのようなイメージをもってしまっていると、新しい行動を開始して、すぐに期待通りの成果が出ない場合、せっかく始めた新しい行動が無意味だと感じ、活動をやめてしまうことになります。ダイエットをしようと決意し、毎日5キロ走り始めたものの、数日たっても体型も体重もほとんど変化しなくて、「こんなの意味ない」と感じてしまうものです。しかしながら、最初から結果はすぐに出ないことを理解しておけば、結果がでないことに焦りや無力感を感じることはなくなります。
新しいことを始めてからなかなか結果が出ずに、その行動をやめてしまったことはありますか?
その時、どう考えれば、行動を継続できたと思いますか?
変化を阻害する人間の性質を受け入れ、変化を起こす道のりを理解すれば、変化をラクに起こすことができるようになります。イチローは「小さなことを積み重ねることが、とんでもないところへ行く唯一つの道」という名言を残していますが、次回のブログでは、モチベーションに頼らずに行動を習慣化するための実践的なテクニックについて深堀りしていきます。
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