やったほうがいいと分かっていて、何年も手をつけていない仕事はありませんか。先送りには3つの理由があり、理由ごとにAIへの頼み方が違います。優先順位を上げるのではなく、仕事のほうを軽くする——その具体的なやり方です。
やったほうがいいと分かっていて、何年も手をつけていない仕事はありませんか。
業務マニュアル、顧客リストの整理、採用ページの見直し。
私にも、そういう仕事がありました。それが、AIを使うようになってから動き出しました。
AIを使うと、先送りが減らせるんです。
ただし、使い方しだいで効き方が変わります。先送りの理由は3つあって、理由ごとにAIへの頼み方が違うからです。今回は、その話です。
1. 先送りには、3つの理由があります
『7つの習慣』でよく知られている話があります。壺に砂利や砂を先に入れてしまうと、大きな石はもう入らない。重要な仕事から先に入れなさい、という教えです。
でも、冒頭のような仕事は、何年も動きません。理由は単純です。石が、重いからです。そして、その重さには3つの種類があります。
1つ目は、「面倒くさい」。何をすればいいかは分かっている。でも、手間がかかる。白紙から書き始める、散らばった資料を集めて整える。最初の一歩が重いので、「落ち着いたらやろう」と先に延びていきます。
2つ目は、「やり方が分からない」。やったほうがいいのは分かっているのに、何から手をつければいいかが見えない。ご本人は「面倒だから」と言うのですが、話をうかがうと、実は入口が見えていないだけ、ということが少なくありません。
3つ目は、「失敗が怖い」。お金が動く、取引先に影響する、社内のやり方が変わる。うまくいかなかったときのことを考えると、踏み切れない。当然の感覚です。
見た目は同じ「先送り」でも、止まっている理由は、これだけ違います。
2. AIは、動き出すときの摩擦を減らしてくれます
では、なぜAIを使うと、先送りが減るのか。
モノは、動き出すまでがいちばん大変です。止まっている重い石を押すときには、大きな力が要ります。でも、一度動き出してしまえば、押し続けるのに必要な力は減ります。
先送りしている仕事も同じです。いちばん重いのは、最初の一歩。だから、コツは摩擦を減らすことです。そして、AIが効くのは、この動き出すときの摩擦を減らしてくれるからです。
ただし、3つの理由のどれで止まっているかによって、AIの効かせ方が違います。だから大事なのは、自分がどれで止まっているかを見分けることです。やり方が分からない人にたたき台だけ渡しても、動きません。何を作ればいいか分かっていないので、出てきたものの良し悪しが判断できないからです。
ここからは、理由ごとの使い方を見ていきます。
3. 面倒くさいなら——まず、完成度3%のものを作る
私自身の話をします。
いま私は、ブログとメルマガを書いています。AIがなかった頃、なぜやっていなかったのか。時間が取れなかったのも事実です。でも本当のところは——面倒くさかったんです。白紙から書き始めるのは、面倒です。
よく「AIに8割くらい作らせよう」と言われます。あれが成立するのは、100点の姿が、自分にはっきり見えているときです。見えているから、8割から磨き上げられる。
いま話しているのは、それとは別の話です。100点の姿がまだ見えず、最初の一歩が出ない状態のことです。この状態でAIに一発でいいものを期待すると、出てこなかったときに「やっぱりAIは使えない」で終わります。
だから、まず完成度3%のものを作ればいい。ひどいものでいいんです。そこから育てていけばいい。
完璧主義は一見、基準が高そうに見えます。でも何も世に出ないので、実はいちばん基準が低いとも言えます。アウトプットの品質は、回数を重ねるうちに上がっていきます。回数が前提だと分かっていれば、1回目がひどくても折れません。
「これから〇〇を作ろうと思っています。完成度3%でいいので、まず形だけ作ってください。そのあと一緒に直していきます。」
4. やり方が分からないなら——世界の誰かが、もうやっています
AIは、あなたの会社のことは何も知りません。でも、世界中の誰かが同じ問題をどう解いたかは、知っています。しかも、それを整理して並べてくれます。
「〇〇をやりたいのですが、何から手をつければいいか分かりません。同じことをやっている会社は、どういう順番で進めているのが一般的ですか。手順を分けて教えてください。」
ポイントは、自社のことを先に話してから聞くことです。何も伝えずに聞くと、教科書的な、平凡な答えしか返ってきません。「従業員30名の建設業で、経理は2人、紙の伝票が中心です」——このくらい伝えると、世界の誰かのやり方が、うちの話として返ってきます。
5. 失敗が怖いなら——リスクは、先に出させられます
怖さを消すことはできません。でも、中身を見えるようにすることはできます。やる前に、想定されるリスクを出させてしまうのです。
「〇〇をやろうと思っています。これを実行したとき、うまくいかなくなるパターンを、思いつく限り挙げてください。特に、後戻りできなくなるものを先に教えてください。」
並べてみると、たいてい「これは大したことないな」と分かります。本当に怖いものは、いくつかに絞られます。漠然と怖いままだと動けません。並べてしまえば、対処できます。
6. 優先順位は、上げなくていい
AIで時間が空けば、後回しにしていた仕事にも手が回る——そう考えたくなります。ところが、実際にはそうなっていません。
パーソル総合研究所が正規雇用者3,000人に聞いた調査では、生成AIを使ったときの所要時間は平均16.7%(週26.4分)短くなっていました。では、浮いた時間は何に使われたのか。削減できた時間のうち61.2%は「仕事をする」ことに使われ、その多くを「日常の業務」(75.4%)が占めていました。(母数は”人”ではなく、”削減できた時間”です)
空いた時間の多くは、目の前のいつもの仕事に吸われている、ということです。時間が空くのを待っていても、先送りしている仕事の番は、なかなか回ってきません。
先送りが動き出すのは、時間が空いたときではありません。着手の重さが軽くなったときです。だから、こうお伝えしたいのです。
優先順位を上げようとするのを、もうやめる。優先順位が低いままでも着手できるくらい、石のほうを軽くする。
私のブログやメルマガも、優先順位が上がったから始められたのではありません。石が軽くなったから、動き出したんです。
今日からできること
- ① 止まっている案件を1つ選び、3つの理由のどれで止まっているか見分ける——手間か、知識か、リスクか。ここを間違えると、効きません。
- ② 見分けた理由に合わせて、上のプロンプトを1つ打つ——そのままコピーして構いません。
- ③ 出てきたものを、5分だけ直す——3%でいいんです。直し始めた時点で、もう動いています。
結論
- 「大きい石を先に入れる」は正しいが、実行されない。石が重いからである
- 重さの正体は3つ。手間・知識・リスク。それぞれ軽くし方が違う
- 優先順位は上げなくていい。石のほうを軽くすればいい
ここまで読んで、こう思われた方もいるはずです。
「で、そこまでやって、いくら儲かったんですか」
——次回、お答えします。
参考・関連記事
- 拙稿「なぜ空いた時間は、別の仕事で埋まるのか」(パーキンソンの法則)
- 拙稿「20万円で外注していた仕事、自分でできるようになりました」(本シリーズ前回)
- スティーブン・R・コヴィー『7つの習慣』第3の習慣「重要事項を優先する」
- パーキンソンの法則:C・ノースコート・パーキンソン(1955年)
- パーソル総合研究所「生成AIとはたらき方に関する実態調査」(2026年2月3日公開/スクリーニング調査:全国の就業者19,855名、本調査:正規雇用者3,000名/調査時期:2025年10月) https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/generative-ai/
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