「そこまでやって、いくら儲かったんですか」

「で、そこまでやって、いくら儲かったんですか」。もっともな疑問です。答えは、すぐには儲かりません。AIで動き出すのは「緊急ではないが、重要な仕事」だからです。AIが減らしたのは、大切だと分かっていることの「面倒さ」でした。

AIを使ったら、何年も手をつけていなかった仕事が動き出した——そんな話をすると、こう思われるかもしれません。

「で、そこまでやって、いくら儲かったんですか」

もっともな疑問です。

すぐには、儲かりません。

それでも、私は構わないと思っています。今回は、その理由の話です。

1. 動き出したのは、「緊急ではないが、重要な仕事」です

AIで動き出す仕事には、共通点があります。

業務マニュアルの整備。顧客リストの整理。採用ページの見直し。取引先への定期的なフォロー。

どれも、やったほうがいいと分かっている。でも、今日やらなくても、誰も困らない。緊急ではないけれど、重要な仕事です。

あるセミナー講師の方の話です。

その方は、セミナーの翌日、参加者200名へのお礼メールを書くのに、いつも大変苦労していました。一人ひとりの名前を書いて、できればコメントもつけて、お礼の気持ちを伝えたい。でも、200人にそこまでやる時間は取れない。結局、全員に同じ文面のメールを一斉に送っていました。

いまは、AIに、一人ひとりの宛名がついた個別メールの下書きを書いてもらっています。あとは見直して、AIには書けない本当の一言を添えて送るだけです。

これは、明日の売上にはつながりません。でも、とても大切なことだと考えて、実施されています。

展示会に出展したある会社も、同じでした。以前は、雛形のメッセージを、名刺交換したすべての会社に送っていました。いまは、相手それぞれに個別のメールを、すぐに送ることができます。これも、すぐに売上になるわけではありません。

緊急でない仕事は、すぐにはお金にならない。だから、ずっと後回しにされてきたのです。

2. 時間で測っても、見えません

では、AIで何時間減ったかを測ればいいのか。

これも、うまくいきません。浮いた時間は、いつもの仕事に吸われていきます。時間の量を見ているかぎり、緊急でない仕事が動いたかどうかは見えてきません。

お金でも、時間でも見えない。では、AIは何を変えたのでしょうか。

3. AIが減らしたのは、「面倒さ」でした

私は、やらなければならないと頭で分かっていることの「面倒さ」だと思っています。

手間がかかる。やり方が分からない。失敗が怖い。どれも、手をつけるときの重さです。AIは、この重さを軽くしてくれます。たたき台を出す。進め方を示す。起こりうることを先に並べる。

渡辺和子さんに、『面倒だから、しよう』という本があります。面倒なことや小さなことにこそ、心を込めて取り組もう——そう説いた本です。

この書名には、大事なことが入っていると思います。面倒なのは、それが大切だと分かっているからです。

あのセミナー講師の方も、そうでした。200人に個別のお礼を書くのが面倒だったのは、一人ひとりにお礼を伝えることが大切だと分かっていたからです。

渡辺さんは、その面倒を、自分の怠け心と闘って越えようと説いています。

いまは、もう一つの道があります。面倒さそのものを、AIに減らしてもらうことです。意志の力で越えなくても、手をつけられるようになる。

KEY INSIGHT

面倒だと感じる仕事は、大切な仕事のサインです。そして、そのサインが出ている仕事こそ、AIに手伝ってもらう価値があります。

4. 測るなら、「何が動き出したか」です

だから、AIの効果を測るなら、問いを変えたほうがいいと思います。

「何時間減ったか」ではなく、「何年も止まっていた何が、動き出したか」。

マニュアルができた。顧客リストが整った。採用ページが新しくなった。どれも、その月の売上には出てきません。効いてくるのは、少し先です。引き継ぎで困らなくなる。取引先との関係が続く。応募者に、会社のことが伝わる。

KEY INSIGHT

すぐに儲からないのは、失敗ではありません。重要な仕事とは、そういうものです。

今日からできること

  • ① 「面倒で止まっている仕事」を3つ書き出す——そのリストは、大切だと分かっている仕事のリストでもあります。
  • ② 1つ選んで、AIに手伝ってもらう——手間なのか、やり方が分からないのか、失敗が怖いのか。止まっている理由に合わせて頼んでください。
  • ③ 1か月後、「何が動き出したか」を書き出す——時間ではなく、動いたものを数えてください。

結論

  • AIで動き出すのは「緊急ではないが重要な仕事」。だから、すぐにはお金にならない
  • 時間で測っても、見えない
  • AIが減らしたのは、大切だと分かっていることの「面倒さ」。測るなら「何が動き出したか」

面倒だから、しよう。いまは、その面倒をAIが引き受けてくれます。

ここまで、AIで、会社の中で何ができるようになったのかを書いてきました。次回からは、目を外に向けます。お客様の側では、いま何が起きているのか。

参考・関連記事

  • 渡辺和子『面倒だから、しよう』(幻冬舎文庫、2017年)
  • スティーブン・R・コヴィー『7つの習慣』(「緊急ではないが重要な仕事」=時間管理のマトリックスの第二領域)
  • 拙稿「20万円で外注していた仕事、自分でできるようになりました」(本シリーズ第2回)
  • 拙稿「AIを使うと、先送りが減らせます」(本シリーズ前回)

NEXT STEP

「面倒で止まっている仕事」を、動かしてみませんか

「シン・仕事術」セミナーでは、AIを仕事で使うやり方を、毎月、経営者の視点でお伝えしています。大切だと分かっているのに止まっている仕事から、一緒に始めませんか。

 

社長業専念コンサルタント 横山 一成

社長業専念コンサルタント 横山 一成

「経営者の志をリスペクトし、その具体化を通じて、お客様や働く仲間もワクワクする会社へ磨き上げるサポートをする」を理念に、社長業専念コンサルティング、企業改革・業務改善等の経営コンサルティング、従業員向け研修を実施している。

関連記事

RELATED POST

PAGE TOP
MENU
お問合せ

TEL: 03-6825-0414